吉川弘文館 歴史文化ライブラリー241
円満字二郎 著
昭和を騒がせた漢字たち 当用漢字の事件簿
(2007年10月1日 第1刷発行)
当用漢字表の制定(1946年)前夜から、常用漢字表の制定(1981年)まで、つまりほぼ戦後の昭和に起きた、漢字が表に裏に関係したいくつかの事件についての考察、ってとこだろうか。
福“丼”県表記の是非
郵政省から逓信省への改名の是非
徳仁様の命名
狭山事件
水俣病問題
…などなど。
水俣病と漢字がどう関係するのかと言えば、被害者が加害企業の株主総会に出る時に「怨」の字の入った幟を立てた、と。
そこではなぜ「恨」ではなく「怨」なのかって話で、
▼(P143)
「怨」という漢字は、他の漢字で置き換えることなどできはしない。(中略)「怨」は「怨」でなくてはならず、唯一無二の漢字なのである。
▲
この「漢字の唯一無二性」ってのが、水俣病の話に限らずあちこちに出てくる。
それをこの本のタイトルにしてもよかったぐらい。
もう一つの大きなテーマが、副題にもなっている当用漢字。
その制定から、それが意義を失うまでの社会の変化が、色んな事件を通して語られる。
当初は“制限”の意味合いが大きかったが、やがてその制限に伴う“窮屈さ”の方が無視できなくなり廃止される。
しかし“基準を求める心”によって新たに常用漢字が定められる、といったあたりは、なるほど、と思うこともあった。
昨今、漢検がもてはやされるのも、「漢検○級」という“基準”を求める心による部分が大きいのではないだろうか。
まあ漢検に限ったことでもないし、それが良い悪いという話でもないが。
漢字云々は別にしてみても、戦後昭和の事件簿としてなかなか面白い読み物だった。
この記事へのコメント一覧